2023/07/17 17:28

前準備

産卵をスムーズに行うための前準備について解説します。

まず、ペアリング(交尾)済みのメスが必要となります。野外で採集したメスであれば、すでにペアリング済みの可能性があるため、新たにペアリングさせなくても産卵が期待できます。

ホームセンターやペットショップで購入したメスは、ペアリングされていない可能性が高いです。そのため、これらのメスに対しては自分でペアリングを行う必要があります。


カブトムシは、成熟して初めてペアリング可能となります。その成熟の目安は、エサを食べ始めてから1~2週間後です。

ペアリングの方法は大きく分けて2種類あります。


一つ目は、「短期間ペアリング」です。こちらは、小さめのケースにオスとメスを3日~1週間ほど同居させ、その後、メスだけを産卵セットに移動させる方法です。この方法の場合、通常はオスとメスを別々のケースで飼育し、ペアリングのためだけに一緒にします。

もう一つの方法は、「同時飼育」です。この方法では、飼育開始時からオスとメスを一緒にします。ペアリングのタイミングを気にせずに飼育できるため、手軽な方法と言えます。

同時飼育はペアリングの回数が増え、結果としてカブトムシの寿命が短くなる可能性があります。長生きさせたい場合は、オスとメスを別々のケースで飼育する方が良いでしょう。

以下では、それぞれのペアリング方法について詳しく解説します。

短期間ペアリング

まず、オスとメスを一緒にするための小さなケースを準備します。ケースの大きさとしては、クリアースライダー小(W181×D124×H112mm)かコバエシャッター小(W153×D230×H173mm)程度が適しています。

ケースの中には薄めにハスクチップやマットを敷きます。これは、メスが深く潜りすぎてペアリングの頻度が下がらないようにするためです。加えて、転倒防止用の木の枝とエサ台を設置します。


ケースにオスとメスを3日から1週間ほど同居させます。ペアリングが直接目視できれば理想的ですが、1週間ほど経過した時点で、2匹が仲良くエサを食べている様子、またはメスの食欲が旺盛である場合は、ペアリングが成功したと判断できます。

産卵セット

ペアリングが成功した後は、メスが元気な卵を産むための段階に移ります。

メスを単独で飼育し、3日間ほど休ませます。その間、KBファームのプロゼリーやバナナなどの高タンパクゼリーを与えて栄養補給を行います。


栄養補給が十分に行われたら、次に産卵セットにメスを移します。

産卵セット : クリーンケースL(W375×D220×H280mm)程度の大きさのケースに、産卵用のマットを使用します。このとき、マットを加水することが必要です。適切な加水量は、マットを手で握ったときに固まり、その固まりを触れば崩れる程度です。

その状態のマットをケースの7割ほどに固詰めし、その上にふんわりとマットを2cm程度敷きます。

直ちにメスを入れると、マットが再発酵して最悪の場合、メスが死んでしまう可能性があります。そのため、3日ほどマットの様子を見て、再発酵(発熱)がないことを確認します。

再発酵がないことを確認したら、転倒防止用の木とゼリーを数個入れます。この際、コバエ対策をしっかり行うことをお勧めします。

コバエ対策としては、クリアースライダーやコバエシャッターなどのコバエ対策済みのケースを使用するか、虫よけシートやキッチンペーパーをケースと蓋の間に挟むことができます。


その後、メスだけを産卵セットに移動させます。この産卵セットへの移動が、「短期間ペアリング」の完了です。

以上が、「短期間ペアリング」による産卵方法の手順です。この手法は、カブトムシを長生きさせたいという目的を優先する場合には特に有効です。次に、「同時飼育」による産卵方法について説明します。

同時飼育

ケース内には産卵用のマットを7割ほど固詰めし、その上に約2cmほどのフワフワとしたマットを追加します。その上に転倒防止用の木、エサ台、ゼリーを配置し、オスとメスを一緒に置きます。


基本的なマットの水分量、再発酵のチェック、コバエ対策などは、「短期間ペアリング」における産卵セットの準備と同様です。

ペアリングのタイミングに気を配る必要なく、自然に飼育することが可能です。しかし、飼育限界を超えないためにも、マットの中を2週間に一度チェックすることをおすすめします。

産卵とその後の手順

もし全てが順調に進んだ場合、メスが卵を産み、約2週間で卵が幼虫になります(孵化)。

産卵セットを組んでから2週間から1ヶ月ほど経った時点でケースの中を確認すれば、幼虫がいることが確認できるでしょう。


産卵セットを確認する際、もし卵が見つかったら、直接手で触るのではなく、スプーンを使ってマットごと取り出してください。直接手で触ると、卵を傷つける可能性があります。また、幼虫を取り出す際も、スプーンやビニール手袋を使いましょう。